「アジアの力を日本へ届ける」コンサルタントの中西です。

困った事にこんな記事を見つけました。

外国人実習生の失踪、過去最多に 急増の背景にスマホ?Yahooニュース

失踪とはただならぬ言葉ですが、様は「実習先からいなくなって何処かへ行ってしまった。」というものです。

法務省によると、今年は10月末までに約4930人がいなくなっており、年間で最多だった昨年の4847人をすでに上回った。 もしかしたら6000人を超えてしまうかもしれません。 実際には届け出がされていない数も相当数あるので、すでに6500人を超えている可能性は十分にあります。

技能実習生全体の失踪率は3.5%(当社調べ)

技能実習生は2015年で全体で約17万人日本国内にいるので、仮に6000人の失踪数だとすると全体の約3.5%が失踪していることになります。

昨年(2014)の失踪者のうち、最も多かったのは中国人(3065人/約2.7%の失踪率)・ベトナム人(1022人/約5.8%の失踪率)、インドネシア人(276人/約2.9%の失踪率) が続いた。これらの国々からは受け入れ人数が多く、今年も国別の失踪者数で上位を占めるとみられる。 (ここで書いた失踪率は、2014年での在留者数から失踪者数を割ってわり出した。)

実際の数だけ見ると中国人が多いですが、率として割り出すとベトナム人が多い事に驚きます。

そして記事では失踪の原因はスマートフォンなどにって、他の職が容易にさがせるようになったから、と締めくくっていますが、はたしてそうなのか?根本的な原因はもっと別にあるのでは?というのが私の考えです。

確かに、通信ツールが発達した事により情報の入手は容易になったかもしれませんが、それであれば、来日前から日本の仕事を探す事は可能です。

海外の現場と日本の現場を両方見ていて思うのは、送出し(海外)、監理団体(国内)、受入れ企業、それぞれの思惑が必ずしも一致していないので、結果的にそれに翻弄された結果、技能実習生が失踪するのではないか?という気がします。

それぞれの思惑、という書き方はとても意味深ですが、何が言いたいかというと。 それぞれがビジネスなので、自分の良いように、応募者や労働者を翻弄している感じがあります。

技能実習生から多額な斡旋料を徴収するケースも

かなりぶっちゃけ話しなので炎上も覚悟ですが、弊社が様々な監理団体や送出し団体にヒアリングして確認をした結果、例えば中国の場合、応募者1人に仕事を斡旋すると紹介料として今の日本円で80~100万円近くを徴収する送り出し団体が無数にあります。 ベトナムの場合は、40~50万円というのが相場なようです。 この金額が技能実習生の仕事の紹介料として高く感じるか?安く感じるか?は人それぞれでしょうが、3年間の技能実習で、お金を残したいという気持ちで来日した実習生からすると、返還はとても大変なことだと思います。

仮に100万円もの多額の紹介料を徴収されたら、それを3年で割ると月々が2.8万円。 月の手取り収入が8~10万円程度しかない実習生にとってはとても大きな金額です。

弊社がメインマーケットとするフィリピンの場合、POEA(海外労働雇用庁)にて技能実習の仕事の紹介料は最大で1か月分の賃金までと制限されています。 この中にはデータは書いていませんが、フィリピン人の失踪率は技能実習を行っている国の中でもトップクラスに低いです。 これは国の政策として労働者保護の観点から、様々な法律で不正を抑制しているからだと感じます。

結局何が原因で失踪するのか?

失踪の原因はいくつかあると思います。 確かにヤフーニュースに書かれていたように、スマホなどの通信手段が発達したおかげで、情報を入手しやすくなり、それによりより条件のいい仕事に飛びつくというのはあると思います。 しかし私は、それ以前に根本的な原因の方が根深いように感じます。

いくつか例を挙げると
1.やりたい仕事と求人のミスマッチ
2.多額の紹介料(斡旋料)
3.技能実習生の内容をよく理解しないままに来日
4.来日前の教育の手抜き
5.低賃金で豊富な労働力を求める企業の募集方法
6.送出し機関、監理団体、受入れ企業の連携不足

おそらくこういった問題を解決するには、ここの事情をしっかりと理解し、かつ求職者にも徹底して制度の中身を理解させることが必要だと思いますが、、、、、。 ここで一つ最大の問題が、今の技能実習制度の賃金体系では、他の国の求人と比べ魅力が薄いので、今までのように簡単に有能な求職者を集めるのが難しくなります。 それでは企業にとって「豊富な労働力を簡単に集める事が出来る」技能実習制度の魅力が半減してしまいます。

技能実習制度の賃金体系の問題は別のブログで書くとして結局、「技能実習生の失踪は誰の責任?」とうのは、法的に問題が無い場合においては、全体の責任としか言いようがありません。 金銭的にリスクを負う企業を被害者のように扱う風潮も一部ではありますが、はたしてそうでしょうか?

おしらく監理団体は受入れ企業に対しては、そういったリスクの説明はちゃんとするはずですし、面接は基本的に受入れ企業の担当者が行ない、自社で求職者に対し内定を出し、実習生と直接雇用を結んでいるはずです。
受入れ企業は、送出し機関について監理団体まかせにせずに相手国の内容を監理団体経由で質問をして、本当に送出し団体のやり方や姿勢に問題が無いかを確認するだけで、リスクヘッジになると思います。

逆に送出し機関も、受入れ企業がいわゆるブラック企業では無いか?仕事の内容は何か?企業風土は?社長の性格は?など細かく確認をすれば、送出し機関そして求職者にとってもリスクヘッジになります。

技能実習制度自体を考え直す

上記にも書きましたが、技能実習制度は「豊富な労働力を簡単に集める事が出来る」というメリットがあると思います。
しかし、現在の制度運用状況は、あまりにそこにフォーカスしすぎて、あまりにも求職者軽視な部分があるように感じます。 これは労働基準法を守っていないとかそいう話ではありません。

他の国では、外国人労働者でも自国民でも、基本的には同じ条件で給与の査定をしたり、待遇を決めます。 要は仕事が出来る人はちゃんとした給料をもらい、能力の無い人は給料が低い。 日本人は島国かつ単一民族なので、外国人との付き合い方がまだまだ他国に比べ劣っているのかもしれません。
しかし人口減少かつ労働力不足の中では、外国人人材に対するマネージメントを考え直す必要がありそうです。

失踪率3.5%を高いと感じるか、低いと感じるかはひとそれぞれですが、技能実習制度は高度化された使い勝手のいい制度なので、企業にはもっと上手に使って外国人労働力は会社の成長エンジンにしてもらいたいと思います。

日本で活躍するフィリピン人人材のリアルを感じる

外国人人材の活用を考える